ここのところ、仕事の外回りの途中、そこここでヒガンバナが咲いている姿を目にするようになりました。
昼間の気温が上がる時間だと、アブラゼミやミンミンゼミ、ツクツクボウシなどのセミの鳴き声が聞こえますが、ヒガンバナが咲き始めるといよいよ秋本番と感じます。
夏と秋が混じっていると言ったところでしょうか。
来週にはお彼岸がやってきます。
ところでヒガンバナという花、別名「曼珠沙華」は有名ですが、他には「幽霊花」なんて失礼な名前も付いています。
これはお彼岸の頃に咲いて、またその場所も墓場の脇にあるのが目立つ、あるいは花の形が、地面から直接茎が出てその先に大きな花を咲かせるので、この姿が他の花とちょっと違うので違和感を覚えて言われるようになった、などの説があります。
さて、その姿は地面から直接茎が生えているのはよく知っていると思います。
しかし、ヒガンバナも植物、光合成で栄養分を作るために葉っぱが当然必要なわけですが、ヒガンバナの葉っぱってイメージできますでしょうか。
これを知っているという人は、観察眼が鋭い人だと思います。
もちろんヒガンバナの葉っぱはあります。
ちょっと古い写真で申し訳ないのですが、これがヒガンバナ。
ある畑の脇に毎年生えているのを見かけています。
さて、このヒガンバナ、花が枯れた後、11月になった頃の同じ場所がこれ。
この二つの写真、撮った時間はほぼ同じ、午後1時過ぎなのですが、影の長さが全然違います。それだけ日が低くなっているのが分かります。そして、何やらヒガンバナの花が生えていた場所から、ポヤポヤと生えてくる葉っぱがあります。
これが、ヒガンバナの葉っぱなのです。
ヒガンバナは花が枯れてから、寒くなる頃葉を伸ばし始めて、冬の間他の植物が枯れてしまって競争相手がいないところで、太陽の光を独占するという戦略で生きてきた植物なのです。
他にも似た習性を持つ植物はあり、タンポポなどもそうですが、タンポポは冬が終わって春に花を咲かせるのに対して、ヒガンバナは冬の前と言う反対の季節に花を咲かせるわけです。
なかなか面白いです。
ヒガンバナに関してもう一つ。ヒガンバナは昔は非常食として人が意図的に増やしていた植物なのです。
ヒガンバナは地下に球根を持っていて、そこに冬の間の光合成による栄養分を貯めて夏を越した後に、その栄養分で花を秋に咲かせます。
この球根にはデンプンが貯められているのですが、これが食料となるのです。
ただし、ヒガンバナの球根には毒が含まれていてそのままでは食べることができません。
水でさらして、毒抜きをしてから食べていたのです。
で、非常食の話ですが、昔は度々飢饉がありました。
その飢饉の原因としては、夏の天候不順があります。
夏に雨が多くて日照不足になったり、逆に晴ればかりで雨が全く降らなくて干ばつになったりすると、秋の収穫がテキメンに悪化します。
すると飢饉が起こるのです。
この時の非常食がヒガンバナの球根なのです。
ただし、この球根を全部掘り出して食べてしまうと、次の年にはヒガンバナがなくなってしまいます。
したがってヒガンバナを食料とするのはいよいよ切羽詰まってどうしようもなくなったときに限り、数を厳しく制限して利用していました。
村の長の許可が無くては食べてはいけないという決まりがあった所もある様です。
ところで、なぜヒガンバナは飢饉の時の非常食になり得るのでしょうか。
それはヒガンバナは冬に光合成をして栄養を貯めるので、夏の天候に左右されないのです。
それを昔の人は知っていて、ヒガンバナを田んぼのあぜや、畑の脇などの空いたスペースに積極的に植えて増やしていたのです。
今、ヒガンバナが咲いているのは、その名残りなのです。